ベトナム人らの駆け込み寺、大恩寺(埼玉県)に行ってきました
2023年11月19日に日本国際看護学会第7回学術集会のテーマである「多文化共生推進における看護の役割 ―誰もがその人らしく生きるために、連携・協働-」の一環として企画された体験型の見学会(エクスカーション)にMINNAから2名が参加してきました。訪れた場所は、ベトナム出身の僧侶である釈心智さんことThích Tâm Trí(ティック・タム・チー)さんが活動の拠点としている大恩寺(埼玉県本庄市)です。
タム・チーさんは、主にベトナム人技能実習生の方への支援を行っています。参加したエクスカーションでは、まず、施設や大恩寺農浄園という畑の見学を行いました。畑は、周辺地域の人々の協力も得ながら在日ベトナム人技能実習生の方々などが自給自足を行い様々な作物を栽培するだけではなく、栽培した野菜を地域の方にお裾分けするなど交流する場として活用されていました。その後、お寺に移動してタム・チーさんからこれまでの活動についてのお話や、ベトナム人技能実習生の方たちからお話を伺いました。
タム・チーさんは、東日本大震災から現在に至るまで、困難を抱える在日ベトナム人に対してさまざまな支援活動(人道相談支援、お葬式支援、お念仏を通じた精神的な支援)を行ってきました。コロナ禍となったことでこれまでの支援活動に加えて、食料支援、保護支援、帰国支援、仕事に繋がる支援、大恩寺農浄園の支援が加わり、現在計8つの活動を行っています。今回は、新型コロナウイルスが流行してから、それまでの相談者を超える大勢の困窮した在日ベトナム人技能実習生や留学生、元技能実習生などに対して行った支援について主に語ってくださいました。コロナ禍の影響で、突然の解雇やベトナムに帰国することもできず、日本で生活をするのもままならない状態に陥っていました。食べるものにも困っている人が多く、SNSなどで知らせてもらい去年までの時点で6万人以上の在日ベトナム人に食料の提供をしていました。また、自殺未遂をした人や精神疾患を患い大恩寺で療養している人に対して、帰国に向けての支援をしていました。お話の中で印象的だったのは、相談内容で多かった項目が、妊娠中絶だったことです。どこにも相談できず中絶に至っていたことや、妊娠中絶後に夜になるとベッドの下に蛇がいるなど幻覚が起こっていた方から相談を受け、一緒に供養をおこなうなど心に寄り添った支援を行っていました。このように、ベトナム人たちを何とか支援したいと向き合ってこられたタム・チーさんの、実例をもとにしたお話によって、コロナ禍の緊急事態宣言下にあった日本で、ベトナム人技能実習生などの置かれている状況がどれほど過酷であったのかが詳細に伝わってきました。
タム・チーさんは大恩寺に助けを求めてこられた人たちからSU PHU(スー フー)と呼ばれているそうです。SUは先生、PHUはお父さんという意味で、そのような存在として呼ばれ、お互いの距離感がとても近いことを嬉しそうに話されていました。また、大恩寺が実家のような安心した居場所になるよう、お互いに助け合い普通の生活ができるように心がけておられます。実際に週末ごとに大恩寺に帰って過ごす技能実習生がいて、そのような場になっていることを肌で感じた訪問となりました。
最後に、「日本ではたらくベトナム人のための健康ハンドブック」をタム・チーさんへ手渡して、大恩寺に来られる方に使っていただけるようお伝えしました。このように、日本に暮らす外国人の方が医療とつながるようこれからも活動を行っていきたいと考えています。MINNAは、このハンドブックの電子版(WEB版)を作成しています。詳細は、こちらのブログをご覧になってください。
みんなの外国人ネットワーク 山内こづえ、斉藤典子