【開催報告】外国人患者と医療者が出会い、診療現場のすれ違いを学ぶ。外国人診療向上ワークショップを横浜で開催
2026年2月20日(金)、横浜で開催された「Metropolitan FM Conference_vol.17(首都圏の家庭医療<Family Medicine>に関わる方のための症例検討会)」にて、「外国人診療向上ワークショップ」を実施しました。
本ワークショップは、日本人医療者と多様な背景をもつ外国人模擬患者がロールプレイを通じて出会い、診療現場で起こりうるすれ違いや戸惑いを体験的に学ぶ場です。MINNA・弓野綾さんの企画により、全国各地で開催しており、今回は8回目の開催となりました。
当日は、医療従事者をはじめ、支援者、研究者など約50人(運営スタッフ含)が参加。
ラマダンや春節、ベトナムの旧正月の時期と重なるなか、4カ国から10人の方々が外国人模擬患者・通訳役としてご協力くださいました。

開催背景
日本に暮らし、学び、働く外国人は増加を続け、在住外国人数は過去最多を更新しています。また、訪日外国人観光客も同様に増えており、医療現場で外国人患者に出会う機会も確実に広がっています。
一方で、診療の場では、言語や文化、医療に対する考え方の違いから、外国人患者への対応に戸惑う医療者も少なくありません。医療機関の体制整備や、困ったときに相談できる窓口の整備も十分とは言えず、医療者が孤立してしまうケースもあります。
また、外国人当事者や支援団体にとっても、健康や医療に関する相談先につながりにくいという課題があります。
そこで、本ワークショップでは、医療者と外国人当事者が直接出会い、互いの経験や視点を共有しながら学び合う場をつくっています。対話を通じて相互理解を深め、困ったときに支え合えるつながりやネットワークづくりを目指しています。
ワークショップの概要
<当日の流れ>
| 時間 | 内容 |
| 19:00-19:05 | 開会挨拶: 金子惇氏(横浜市立大学、横浜市立寿町健康福祉交流センター診療所) |
| 19:05-19:10 | 導入(主旨説明): 弓野綾氏(横浜市立寿町健康福祉交流センター診療所、東京大学大学院医学系研究科 医学教育国際協力学部門特任助教、横浜市立大学大学院 ヘルスデータサイエンス専攻、みんなの外国人ネットワーク) |
| 19:10-19:25 | 講義1「外国人診療の質を高める学習法〜当事者と共に学ぶ〜」 大西弘高氏(東京大学医学系研究科 医学教育センター 医学教育国際協力学) |
| 19:25-19:45 | 外国人患者対応ロールプレイ1(模擬面接)+振り返り |
| 19:45-20:00 | 講義2「外国人患者対応に向けた医療従事者支援」 Yu Par Khin氏(東京科学大学 特任助教) |
| 20:00–20:25 | ロールプレイ2(模擬面接)+振り返り |
| 20:25–20:45 | 全体共有 |
| 20:45-20:50 | まとめ:弓野綾氏 |
| 20:50-21:00 | 総評・閉会挨拶 |
大西さんの講義では、外国人患者が医療を受ける際に直面する言語・制度・文化の壁について、研究データと共に紹介されました。そのうえで「異文化感受性」や「文化的謙虚さ」という視点をもとに、ロールプレイで自身の関わり方を振り返るための理論的な枠組みが共有されました。
その後、参加者は模擬診察、受付・看護・薬局などを想定したロールプレイを体験しました。
シナリオは、「長引く咳・不眠」と「腹痛」の2つの主訴を軸に構成。
「長引く咳・不眠」のケースでは、喘息と軽度うつ、あるいは結核を想定し模擬診察が進められました。「腹痛」のケースでは、妊娠または胆石・GERD(食習慣変化)を想定した診療が進みました。
その後、Yu Par Khinさんによるミニ講義が行われました。医療従事者の異文化対応能力に関する研究をもとに、外国人患者への対応で直面する課題や、現場で生じる負担について整理されました。さらに、ロールプレイなどの実践的な研修や、通訳体制をはじめとした支援の重要性が共有されました。
総評では、主催者側から「外国人当事者から受診時の体験を直接聞ける貴重な機会だった」「言語や文化の違いに戸惑いながらも、参加者が懸命にコミュニケーションを取ろうとしていた姿が印象的だった」と振り返りがありました。
また、外国人診療には時間を要し、制度や生活背景など多くの要素が関わるため、医療現場だけで解決することは難しいという課題も共有されました。そして、行政や地域との連携の重要性が改めて確認されました。
参加者の声
医療従事者の声
- 「結核と診断した後、仕事を続けられるか、在留資格がどうなるのかという制度面の壁が話題になりました。医者一人では手に負えず、ソーシャルワーカーや支援団体につなぎ協力していくことが必要と感じました。」(医師)
- 「今年医学部を卒業します。診察自体に余裕がないうえ、異文化や宗教への配慮をどうすればよいのかわかりませんでした。イスラム文化圏の女性患者さんに、男性医師が触れてよいのか、妊娠の話を聞いていいのか、ラマダン中はいつ薬を飲むのかなど、知らないことばかりでした。自分と相手の理解がないと診療のスタートラインに立つのも難しいと感じました。」(医学生)
- 「薬局の設定で多言語問診票から妊娠がわかったところから始めました。日本語でのやり取りに戸惑い、プライバシーに関わる質問をどう聞けばよいか迷いました。副作用が出た場合の対応など、薬の説明を伝える難しさを実感しました。」(薬剤師)
模擬患者役の声
- 「丁寧に遠慮がちに説明してくれたのが、逆にわかりにくいと感じました。日本の医療者はとても優しいので、遠慮せずはっきり質問してくれて大丈夫です。」(模擬患者役)」
- 「友人の皮膚科受診に通訳で行った経験があります。体のことはプライベートなので、友人は私に知られたくない気持ちがありました。でも、私に伝えないと医師に診察してもらえないので話さなければならない、葛藤があったと聞きました。」(医療通訳役)
主催者コメント
今回は、今までワークショップ準備チームでは経験のなかった、ムスリム女性の妊娠や診察についても扱いました。また、模擬診察だけでなく、診察前の医療機関受付や看護師の問診、また受診後の薬局での場面を扱うことで、外国人患者さんの医療機関での経験(Patient Journey)の全体が、参加者にとって見えやすくなることを目指しました。結果として、総合診療医でない参加者の方も、学びになることが多かったとコメントいただき、よかったです。
外国人当事者と医療者が同じ場で対話し、互いのことを知る。その小さな積み重ねが、よりよい医療の場をつくる一歩になります。今後も全国でワークショップを開催し、出会いと学びの場を広げていきます。
▶︎本ワークショップが朝日新聞で取り上げられました!
「外国人の患者とどう接する? 横浜で医療者が学ぶワークショップ」(2026年2月26日 朝日新聞より引用)
<文/神田未和>


